ADAPTATION DESIGN

僕の提唱する「ADAPTATION DESIGN」に肉付けするための教養のブログ。という趣味を全面的に肯定するために始めたただの暇つぶし

Column Book's plants:「The giving tree」

No.34「The giving tree」はShel Silversteinにより描かれた絵本で、余白のあるモノクロの線画にとても深く考えさせられるストーリーで読み手にいろいろな解釈をさせる作品です。私はこの絵本に大学時代に出会い、その物語の豊かさに感動し、それから一番好きな絵本としてます。最初に読んだのは村上春樹訳のものでしたが、原文を見たところ、その解釈できる幅の広さに驚かされました。日本訳では本田錦一郎訳(1976)版と、村上春樹訳(2010)版の2つがあります。ではその内容を紹介します。

 

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Once there was a tree...

and she loved a little boy.

And everyday the boy would come
and he would gather her leaves
and make them into crowns
and play king of the forest.

He would climb up her trunk
and swing from her branches
and eat apples.

And they would play hide-and-go-seek.

And when he was tired, he would sleep in her shade.

And the boy loved the tree...
very much

And the tree was happy.

But time went by.

And the boy grew older.

And the tree was often alone.

Then one day the boy came to the tree and the tree said, "Come,Boy, come and crimb up my trunk and eat apples and play in my shade and be happy."
"I am too big to climb and play," said the boy.
"I want to buy things and have fun. I want some money. Can you give me some money?"
"I'm sorry", said the tree, "but I have no money.
I have only leaves and apples. Take my apples, Boy, and sell them in the city. Then you will have money and you will be happy."

And so the boy climbed up the tree and gathered her apples and carried them away.


And the tree was happy. 

But the boy stayed away for a long time...
and the tree was sad.
And then one day
the boy came back and the tree shook with joy and she said,
"Come, Boy, climb up my trunk and swing from my branches and be happy."

"I am too busy to climb trees," said the boy.
"I want a house to keep me warm," he said.
"I want a wife and I want children, ans so I need a house.
Can you give me a house?"
"I have no house," said the tree.
"The forest is my house, but you may cut off my branches and build a house.
Then you will be happy."

And so the boy cut off her branches and carried them away to build his house.


And the tree was happy.

But the boy stayed away for a long time.
And when he came back, the tree was so happy she could hardly speak.
"Come, Boy," she whispered, "Come and play"
"I am too old and sad to play," said the boy.
"I want a boat to take me far away from here.
Can you give me a boat?"

"Cut down my trunk and make a boat," said the tree
"Then you can sail away... and be happy."

And the boy cut down her trunk and made a boat and sailed away.

And the tree was happy...

but not really.

And after a long time the boy came back again.
"I am sorry, Boy,"
said the tree, "but I have nothing left to give you-

My apples are gone."
"My teeth are too weak for apples," said the boy.
"My branches are gone," said the tree. "You cannot swing on them-"
"I am too old to swing on branches," said the boy
"My trunk is gone," said the tree.
"You cannot climb-"
"I am too tired to climb," said the boy.

"I am sorry," sighed the tree.
"I wish that I could give you something...
but I have nothing left. I am just an old stump. I am sorry...."
"I don't need very much now," said the boy, "just a quiet place to sit and rest. I am very tired."
"Well", said the tree, straightening herself up as much as she could.
"well, an old stump is good for sitting and resring.
Come, Boy, sit down.
Sit down and rest."

And the boy did.

And the tree was happy.

 

日本語に訳してしまうとそのニュアンスが崩れてしまうため、あらすじだけ日本語で載せておきます。

 

【あるところに一本の木があり、そこに毎日遊びに来る男の子がいて木に登ったりリンゴを食べたりして木で遊んでいます。その木は男の子のことを愛しており、男の子も木のことが好きでした。木はそれだけで幸せを感じています。時間が経過するにつれて男の子は木のところへ来なくなります。成長した男の子はたまにやってきては「お金が欲しい」、「家が欲しい」「船で遠くに行きたい」と木に要求します。木はそのたびに「リンゴを売ればいい」「枝を使って家にしなさい」「幹で舟を作りなさい」と大人になった男の子に、自分自身を無条件に与え続け、切り株となってしまいます。木はそれでも幸せでした。それから長い年月が経ち、すっかり年老いた男の子が来た時に木は「もう上げれるものは何もない」と言いますが、男の子は「欲しいものはもう何もない。静かにやすみたい」といいその切り株に座りました。木はとても幸せでした。】

 

このあらすじではこの作品の情緒を伝えることはできませんが、大まかな内容は理解できたでしょうか。

 

さて、この物語は世界でも話題を呼び様々な角度から解釈がなされ、論文まで発表されています。宗教的解釈、環境から見た解釈、友情としての解釈、親子としての解釈、虐待的な関係としての解釈、そして哲学的解釈。私はこの物語を木の立場を変えながら読むことが好きです。なぜならそれは見方を変えると無償の愛では片づけることのできない悲しい物語にも幸せな物語にもなるからです。それではこれから私が考える一つの解釈を記述してきます。

 

まず本質的に木は男の子と共にいることを第一の幸せと考えていて、男の子の望むことを叶える為に自発的に自分の一部を与えていきます。それは自己犠牲とは少し違ったニュアンスで、ここでの「与える」行為はあふれる生命の充実を意味しているのであって、木は本質的に犠牲的喪失をしていません。木は男の子が「与えられる」ことで得られる幸福感に喜びを見ていたということです。それは最後のシーンで切り株になってしまった木が「I wish that I could give you something...but I have nothing left. I am just an old stump. I am sorry....」と嘆き落胆してしまうことからも分かります。しかしこの後、年老いた男の子が「I don't need very much now.just a quiet place to sit and rest. I am very tired.」と言います。そして木は「well, an old stump is good for sitting and resring.Come, Boy, sit down.」と少年に休息を与えます。そこで木は「与える」行為を改めてすることでカタルシスを得ることができ、幸せだと感じたわけです。

 

では木により与えられ続けられた男の子は本当に幸せだったのでしょうか?なぜなら、この絵本の成長し大人になった男の子が幸せそうにしている挿絵が一切ないく、お礼の一つも言いません。私はこの話の骨格に旧約聖書の「創世記」があるからではないかと推測しています。エデンの園の中央部には知恵の樹があり、アダムとイブはそこに実っていた禁断の果実(知恵の実)を口にしたことで、無垢と永遠を失い原罪を背負うようになります。そして生きるには厳しい環境の中での苦役を強いられるようになりました。お話を見直すと、純粋無垢であった男の子が成長することで生まれた欲に対して木が「知恵(リンゴ)」を与えたことにより、男の子は原罪を背負うことになってしまいます。そして新たな欲と向き合い続けなければならなくなりました。絵本の中で成長していく男の子は一切笑うことなく、木から与えられたものをもくもくと運ぶだけの存在となってしまいます。少年は与えられ続ける存在であり、与えられるたびにその背中の原罪を重くしていきました。

 

では逆に与え続けてきた木は本当に幸せだったのでしょうか?それは男の子目線から眺めることで分かります。そもそも木は男の子に出会う遥か前から存在していましたが、小さいころの男の子がそこを遊び場にすることで関係が生じ始めます。その頃の男の子にとってその木は特別な存在であることは間違いありませんが、成長しお金が必要になった男の子にとってその木は決して特別な木ではなく、多くある選択肢の中の一つであることを理解しなければなりません。リンゴを抱えて去っていった男の子は少年でしたが、次に家を求めた男の子すでに大人になっており、そこには長い年月が経っていることが分かります。男の子にとってその木は特別ではなく、自分に利益をもたらすだけの存在へと変化してしまっていたわけです。木は自分が男の子にとって特別な存在かどうか確信することなくその一生のすべてをその男の子に費やしていたことになります。

 

では、なぜ作者は最後に年老いた男の子を木のもとに何も求めずに訪れさせ、切り株に腰かけさせたのでしょうか。この最後のシーンの余白こそ、物語に最大のカタルシスをもたらす重要な役割をしていると私は思います。男の子にとってこの木は自分に原罪を背負わせた特別な存在であると認識し、求めてばかりいた人生だと悟りました。そして木に会いに行く「与える」行為をすることで初めて木に対し贖いました。逆に木は初めて「与えられた」ことで特別であることを確信することができ、その生涯に意義を見出すことができました。最後のイラストの切り株と腰を掛ける年老いた男の子はどこか満たされており、お互いの存在を確かめあっているように見えます。

 

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ここまでの解釈はあくまでも私の勝手な意見なので、二人の間にこんな思惑があったわけではありません。皆さんはそれぞれ自分の解釈を深めていただきたいと思いますが、内容的にとても子供用の絵本だとは思えません。実際、子供がこの本を読んだ時にどんな感想を持つのか聞いてみたいと思いました。もっと素朴で本質的な感想が出てくるのかもしれません。

 

個人的にこの物語の続きはこんな最後を想像しています。

 

【年老いた男の子は切り株の上でその生涯を終えました。そして木もずっと一緒にいられる喜びに満たされながら朽ちていきました。長い年月を経て真に心を通わすことのできた2人を横目に新たな命が芽生えます。なにごともなかったかのように幸せを夢見て。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしよければ挿絵と共に本を読んで独自の解釈をしてみてください。

英語版の方がおススメです。

The Giving Tree (Rise and Shine)

The Giving Tree (Rise and Shine)

 
おおきな木

おおきな木

  • 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,村上春樹
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 2010/09/02
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