ADAPTATION DESIGN

東京藝術大学の大学院生と武蔵野美術大学の教務補助の二足の草鞋を履く男のブログ

Monologue:「人間と植物のSEX」

No.20 タコやヒラメ、カメレオンが擬態することは有名な話ですが植物も擬態することは知っているでしょうか?動物の擬態は、攻撃や自衛の際に環境に溶け込むことでその確率を上げたり下げたりします。植物の擬態はまた違う意図がそこにあるのです。蘭という植物を例に、擬態にみる性交と人間との関係について考察していきたいと思います。

 

蘭は多様な進化を遂げている植物の一つで、地球上にもっとも遅く現れた植物だといわれています。すでに植物に覆われた地球で繁栄するために短期間で適応拡散を頻繁に繰り返した結果、種子間での遺伝子的隔たりが少ないため種間雑種や属間雑種が生まれやすく、被子植物の中でもっとも種数の多い科になってます。着生植物で主に樹木や岩盤に着生し生息しています。また、その花は独特な形をしておりそれぞれ6種類のそれぞれ異なった花びらで構成されています。

 

今回、取り上げるのは「共進化」についてです。共進化というのは密接な関係を持つ複数の種が、お互いに影響を及ぼし合って進化する」ことをいい、具体例を挙げるとミツバチが色々な花から蜜を集める際に体に花粉をつけ、花から花へ移動し受粉を手助けするといった関係性のことをいいます。そんな共進化の中でも、異質な関係性を築いた蘭がいます。それが「Ophrys speculum オフリス・スペキュラム」です。

 

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「Ophrys speculum」はギリシャ語の「ophris(眉毛)+speculum(鏡)」が由来しています。地中海沿岸地方の標高1200m以下の草原や常緑針葉樹林に自生しています。葉はロゼット状に展開されていて、濃い緑色の平行脈が目立ちます。また蘭では珍しく地生ランで、地下に肥大した根があります。そして花がハチを思わせる擬態花であることが最大の特徴となっています。特定のカリバチに対して花がそのカリバチの雌の外見と性フェロモンを真似することで「偽似交接」を誘発させる形状になっています。雄のカリバチはランが分泌するフェロモンや匂いに興奮状態になり、花と交尾を試みようとします。その結果、カリバチはその努力でかなりの量のエネルギーを費やした上に無益に終わりますが、蜂の体にはしっかりと蘭の花粉が付着しています。この場合の擬態は捕食や身を隠すといった動物的な擬態ではなく、繁栄を目的に行われている植物的な擬態と言えるでしょう。この擬態は植物の適応能力の強力さを実感するいい例だと思います。さらに驚くことに、最近の研究ではカリバチが射精したときに出した精子がこの擬態をより精密なものにしているかもしれないという結果が出ています。これによりカリバチは蘭からより離れることができなくなっていきます。

 

蘭が最も遅く地球に現れたのにも関わらず、種を増やし続けれたのは、他者を操る能力に長けているからなのかもしれません。蘭にとって人間は蜂に代わる重要な花粉を運ぶ媒体になっています。とするなら、人間が蘭を栽培し保護している背景には、無意識のうちにフェロモンを感じて快楽に溺れているのかもしれません。実際にアヘン、ヘロインといった植物は人間の快楽に訴えかける作用のあるオピオイドを有して大量の人間を惑わせてきました。快楽を求め植物を栽培し、その恩恵にあずかる人間の姿はまさにカリバチと同じで植物とセックスしているようなものでしょう。ヘロイン中毒者は無表情で無気力になり、その脳内で分泌される脳内麻薬(自分の体を守るうえで人間が分泌する強力な鎮痛作用や快楽のある物質)の恍惚感に浸り続けようとします。もしかしたら、植物のほうが人間同士でセックスをするよりも快楽を得られるのかもしれません。

 

resou.osaka-u.ac.jp

nlab.itmedia.co.jp

 

 最後に、人間と植物の細胞融合に成功したという記事を見かけました。果たしてこれにより、植物と人間が直接交わる日は来るのでしょうか?そうなった時に、人間は人間を選択することはできるのでしょうか?

 

 

 

 

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