ADAPTATION DESIGN

僕の提唱する「ADAPTATION DESIGN」に肉付けするための教養のブログ。という趣味を全面的に肯定するために始めたただの暇つぶし

Column: Movie's plants「The Martian」

No.21 植物の映画と言えば「The Matian」ですね。日本だと「オデッセイ」という邦題なのでこちらに馴染みがあると思います。

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「オデッセイ」はアンディー・ウィアーの「The Martian(火星の人)」という小説が原作のリドリー・スコット監督作、主演マット・デイモンの火星に一人置き去りにされた宇宙飛行士による孤軍奮闘の様子や周りの乗組員やNASAのスタッフの救出するために知恵を結集する様子を描いたSFアドベンチャー映画です。邦題がマーシャンや火星人ではなくオデッセイなのかというと、The(たった一人の)のニュアンスを邦題に込めることが難しかったらしく、ギリシャ神話のオデュッセイアの中で語られている、がトロイア戦争に勝利し凱旋する際に激しい嵐に見舞われ10年間さまよったことからきています。

 

さて、何が植物の映画なのかというと、主人公のワトニーが植物学者として宇宙に向かっており、火星で生き残る手段として科学を駆使して火星初のジャガイモの栽培を成功させるからなのです。火星の基本情報として平均気温は-43°で大気の約95%が二酸化炭素で覆われており、地表の大気圧は地球の1/100で重力は40%ほどです。そしてジャガイモ(Solanum tuberosum L.)はナス科ナス属の多年草で和名は馬鈴薯といいます。南米のチリやペルーの高地が原産の植物で、地下の茎の部分にデンプンを蓄えた塊茎を主に食用として利用されます。保存の効き寒さに強いジャガイモはインカ文明の時代から多くの人間を食糧難から救ってきた私たちと関わりの深い植物です。火星でジャガイモは育つのかというところですが、火星の砂には窒素やリン、カリウムなどの栄養分を豊富に含んでいる分、そのままでは植物に必要なバクテリアが存在しないため、ワトニーは地球の土と乗務員の排泄物をした使用して土を作っていました。二酸化炭素が豊富な火星はジャガイモの栽培に適しており、収穫量もスピードも2~4倍に増加すると期待されています。実際にペルーの研究所が仮想火星空間においてジャガイモが成長する過程が公開されているのでリンクを貼っておきます。

 

www.youtube.com

 

映画の中でワトニーがジャガイモ葉や茎を食べなかった理由として、ジャガイモの芽や葉、そして茎には「ソラニン」と呼ばれる毒性物質が含まれているのはご存知でしたでしょうか。それは神経に作用する毒性をもち、頭痛や嘔吐、下痢などの症状を発症させ、大量に摂取した場合は死に至ることもあるような毒性です。その為、スペイン人によってヨーロッパに持ち込まれる際に船内で芽が出たものを食べて毒にあたった船員がいたため、「悪魔の植物」と呼ばれていた過去があります。

 

www.designboom.com

 

宇宙開発において植物は必要な存在で、限られたスペースでの持続可能な宇宙生活を可能にするには二酸化炭素や酸素の存在しない宇宙空間での植物と人間の相利共生が必要になります。人間の排泄物や二酸化炭素には植物に必要なバクテリアや養分が存在しており、それによって育つ植物は人間の食料や酸素になるサイクルが生まれます。それはこの密封空間においてサイクルを繰り返し50年も手を加えずに生きているこの植物のように、唯一人間がまた自然のサイクルに戻ることができることを実感できる空間と言えるでしょう。

 

www.dailymail.co.uk

 

最後に映画の中で特に印象に残っているワトニーのセリフを取り上げたいと思います。

 

They say that once you grow crops somewhere...you've officially colonized it.
So, technically...I colonized Mars. In your face, Neil Armstrong.

植物を育てたらそこは植民地になるらしい。だから僕は火星を植民地化したことになる
見たか、アームストロング

 

 

オデッセイは全体を通して砂漠を連想させるような火星の背景が描かれており、物語の作りとして西部劇を意識していると感じました。銃で撃ち合うような西部劇ではなく、アメリカ開拓時代に人々がその活動領域を広げながらそこに根づくまでの物語です。John Chapmanことジョニー・アップルシードが開拓者と共にリンゴの木を植えて栽培することで、開拓者が原始的な土地を支配した象徴としてたように、未開拓の土地で植物を育てることは雄大な自然に対しての恐怖を克服することと同義なのでしょう。この場合はジャガイモですがその役割に変わりはなく、実際に映画の中でワトニーはジャガイモの成長を通じて心の平穏を保ちます。そんな中でのこのセリフは孤独を紛らわすワトニーらしいユーモアと、開拓者として火星で生き延びているワトニーの決意なのだと思います。

 

最後にフランス語でジャガイモは「pomme de terre(ポンム・ドゥ・テール)」といい「土中のリンゴ」と表現します。人間が宇宙を開拓するにおいて、ジャガイモはリンゴの代わりになることができるのでしょうか?はたまた、禁断の果実にすらなり得るのかもしれません。それほど「オデッセイ」に見るジャガイモは可能性に溢れていました。

 

 

 

他のColumn:Movie's plantsはこちらです。

adaptation-design.hatenablog.com

 

映画をまだご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

 

オデッセイ(字幕版)

オデッセイ(字幕版)